俺が仕事をしようと家を出ると、一匹のぬこが行く手を遮った。
俺はこの小憎たらしい生き物の姿を全世界に晒すため、部屋に戻ってカメラを取ってこようかと思案したが、そこでこのぬこが病気であることに気がついた。
おおその醜い容姿に加え、伝染病を振りまく悪しき存在め。これは是非とも折檻せねばなるまい。
俺はぬこに「そこを動くなよ」と一言言い残して部屋に戻った。カメラと百均の布袋を手にとって戻る。馬鹿なぬこめはまだ道ばたに横たわり、俺はそれを簡単に取り押さえて撮影し、袋に収めることが出来た。しめしめ。俺の拷問により、ぬこは見る影もなくなるだろう。後日再び撮影して見比べてやる。
それに、そうだ。このように邪悪なぬこには、専門の虐待師をつけてより高度な責め苦を与えよう。俺ははやる気持ちを抑え、虐待師の元を訪れたが、我が家に近い二軒の虐待施設は何れも昼休み中であった。再開は夕方である。オノレ。
仕方なく俺は部屋にぬこを持ち込み、檻の中に監禁した。まずは己の昼食を摂る。施設の再開が待ち遠しい。
小一時間が経ち、時間が来た。再びぬこを袋に押し込めて自転車を漕ぐ。途中ぬこはもがき暴れた。忌々しい小動物め! 俺は声を荒げて叱責したが、ぬこは聞いて居ないようだ。憎らしい。
施設に着き、拾ったぬこを折檻したいと申し出ると、太った虐待師めは「少々危険ですが、このように醜いぬこにはこれしかないでしょう」と邪悪に笑って、揮発溶剤を含ませた脱脂綿を、ぬこの耳に押し込んだ。ぬこの痛んだ耳には辛い仕打ちだ。流石はプロである。
俺は虐待師からのアドバイスを受け、いくつかの拷問道具を購入して帰宅した。
ふたたびぬこを檻に移す。
そう簡単に死なれてはつまらない。まずは餌を与えねば。しかしただの餌では駄目だ。
俺は虐待師より購入した専用の臭い餌に、白い粉末を加えた。この粉末はぬこの体内に潜む生命を皆殺しにする。ぬこは仲間を失い、孤立するのだ。
馬鹿なぬこめは俺の思惑も知らず、臭い飯を平らげた。ククク……。しかしお楽しみはこれからだ。
俺はぬこをつかみ上げると、その下半身を膝に挟み、上半身を押さえ込んだ。もがき苦しむぬこの顎をこじ開け、異臭を放つオレンジ色の溶液を喉に流し込む。そして間髪入れずに、ぬこの目に別の汁を垂らした。
「ギニャァ!」とぬこは高く鳴いて目を閉じたが、俺は容赦せずに瞼を押さえ、貴重な汁が零れないようぬこの目に揉み込んだ。
この瞬間がたまらないぜ。
辛くて。
あああああああああ。辛い、辛いよ、辛いですよ! 病気の仔猫の世話は!
バリケンネルの中でずっとあーあー言ってるし! 鼻が詰まってるからちゃんと鳴けないんだぜ! 息を吸う時グプッって鼻水が詰まる音がするんだぜ! アホか!
一人だから押さえ込むのも大変なんじゃ! バカ! 金もねぇくせに!
俺は血統書つきで美しく管理された犬猫を飼うようなヘタレであるため、病気の動物の世話をしたことがない。てか野良でもこんな状態の悪いのを見かけるのははじめてだったりする(除く死体)。
馴れてる(?)人から見たら「ばかじゃねーの?」って感じだろうがマジ狼狽えるぜ。ヤバいぜ。
いやー、俺の見てない所で死ぬ分には構わないんだけど。目の前でズビズビいわれたらホントたまらんな!
さっさと良くなって出ていってくれ!