2005年07月19日
[絢爛]第6世界時間2055年8月28日までの舞踏
カオル・カムラ
威信点11195 撃墜数280 殺害数3008
※脚色は一切ありません。
7月13日、仲間になったばかりのイイコが死んだ。
俺はちょっとイイコに遅れて出撃して、しかも(後で知ったことだが)丁度魚雷の在庫が尽きていて、手持ちの武器は接近戦闘用の剣鈴しかなかった。
一度着艦しようかとも思ったが、その頃俺の操縦スキルは90を超えていて、敵の魚雷が反応することはほとんどなかった。
初期から操縦スキルが80を超えているイイコもまた敵の魚雷を危なげなく避けて進んでいく。いつもかなり近寄ってから攻撃を開始する貧乏性の俺とは違い、割と早い段階でガンガン魚雷を発していたから、まぁ大丈夫だろうと思った。
イイコの方にいる敵艦は一機。俺がつく頃には片付け終わっているだろうと判断し、それとは別の方向の敵を落としに向かった。
浮上するイイコとは逆に、潜航した俺が向かった先にいたのは、偵察艦だったか、小型戦艦だったか、良く覚えていない。
とにかくいつもの要領で近づいて、剣鈴で攻撃した。死人は少ないほうがいい。手加減をした。敵艦は一撃で撤退を始めて、接近戦が出来るほど近くにいた俺は、次の敵に向かいがてらすぐにそれを捕捉した。
その時だったと思う。上空──上海、か?──から爆発音が聞こえた。イイコの放った魚雷が敵艦に命中して、敵艦が圧壊した。
流石。そう呟いた次の瞬間、今沈んだ敵艦から現れたJ級フレームが、スルスルとイイコ機に近づいた。シールド突撃。
──は?
唖然とする俺の目の前で、そのJ級フレームはイイコの残した魚雷に接触して、圧壊した。
戦闘を終えて着艦する。魚雷のローディングを変更し、念のためステータス画面を開いた。
イイコ
2252年7月13日没
威信点44 撃墜数1 殺害数247
死んだ後の撃墜はカウントされないらしい。まぁ、当然か。
俺は少し笑って、自分以外の誰かを飛行隊へ配属することは二度としないと誓った。
数日後、都市船に寄航してイイコの水葬を行った。
会ったばかりの女の子の死に罪悪感はあったが、衝撃はそれほどでもない。でも、これがヤガミだったらと思うとなんとも言えない気分になる。
ヤガミは今整備一班にいる。ハリーとマイケルが入ってきて、歴戦の兵を民間人にしておくのも勿体無いと思い、ハリーには飛行隊長になってもらった。
マイケルには整備の基礎を教えて(何かマニュアルを渡したと思う)、ヤガミと一緒に整備一斑に配属した。もともと整備一斑に居たネリには二班に移動してもらった。ヤガミと勤務時間がズレるのが嫌で、ちょっと職権(?)を乱用させてもらった。いつの間にか俺の威信点はエリザベスを大きく抜いて、艦内の人事を好きなように決められる。でも給料は少ないし、個室をもらったのもつい最近だ。
威信点と言えば、入ってきたばかりのマイケルに呼び止められて、「尊敬してます」なんて言われた。そんなことを言われたのは初めてだ(ヤガミがアイアンに言っているのを見たことはある。その後二人は食事に行って、俺はヤキモキした)。驚きつつ礼を言ったら、次の日マイケルは女の子になっていた。火星人てのは不思議な種族だ。
それで。イイコの事をマイトに何て伝えればいいだろう。
二人はどうやら知り合いらしい。多分、陳腐な言い方をすると、運命に結ばれている何かだったんだと思う。お互い若くて気づいていないようだったけど。
陸戦部隊として派遣されているアキ、カオル、マイトには、ヒマを見つけて手紙を書いている。時々返事が来ることもある。
深く考えず、マイトへの手紙にはどうでもいいことを書いた。何を書いたか覚えていないから、どうでもいいことだったんだと思う。
帰ってきたら、マイトはどんな反応をするだろうか。
さらに数日後、次の都市船に寄航した。何故か、水葬が始まった。
──あれ? 誰か死んだっけ?
戦闘中にケガでもしたのか? いや、そんな被害を受けた戦闘はなかったはず。誰が死んだんだ?
これで三度目になる水葬。MAKIが読み上げるアリアン(ヤガミの別名だ)のメッセージはいつも同じで、違うのは死者の名前だけだ。
「私たちは、生前のマイトを忘れてはならないのです」
──はい?
派遣先でミスでもしたのか? にしてもなんでこんなに突然。そう考えて、フと思い出した。
そうだ。酒保に手紙が来ていたはず。丁度戦闘開始直前に届いて、受け取るのを忘れていた手紙。どうせまたカオリからのどうでもいい話の手紙だろうと思っていた手紙。
水葬を終えて出航した後、俺は酒保に向かって手紙を受け取った。マイトからだった。
「この手紙を受け取る頃には、自分は死んでいるだろう。地獄で会おう」
これがマイトからの最初で最後の手紙だった。
本人は、運命や戦争を皮肉ってそう書いたのかもしれない。が、イイコのことがあった直後だけに、「地獄」の字が妙にチカチカして見てた。
マイト
2252年7月20日没
飛行隊に配属しなくても人は死ぬ。
戦争なんてクソ喰らえだ。
8月。
俺は出来るだけのことはやっているつもりだ。
ヤガミの尻を追いかけているだけじゃない。その他の仲間とも親しくしているし、スキルだって上げている。都市船に停泊している間、各部署の人材を整理したりもする。
第一種戦闘配置のアナウンスがあれば何を差し置いてもコックピットに向かう。この機に乗じて誰かの好感度を上げようとしたりはしない。
戦闘ではなるべく敵側にも死人を出さないように努めているけれど、夜明けの船の安全を優先させている。自分も夜明けの船も、被弾すること自体稀だ。
それでも人が死ぬのは、俺が悪いんだろうか。
8月。冥王星に派遣中のポー教授から手紙が届いた。内容はマイトからもらったものと同じだ。何度か手紙を書いたけど、返事がこれだけだったのもマイトと同じだ。
後日ニュースを見ると、ポー教授暗殺の報が載っていた。
オリンポスで遊説中に射殺されたらしい。
俺にはどうすることも出来ない。
作戦会議で誰かの派遣が決まったら、一時的に艦長になって行き先を変更し、派遣を阻止することは出来る。
でもそれじゃあ多分、戦争は終わらない。いつかは終わるのかもしれないけれど、その間にもっとたくさんの人が死ぬだろう。
他に出来るとしたら、リセットを押すことくらいだ。
ポー教授
2252年8月11日没
それから8日後のこと。
都市船に寄航し、上陸してみると、人だかりが出来ていた。近寄ってみた。
MPKが連行されていくところだった。
スパイ容疑をかけられたらしく、もう立ち上がれないほどに暴行されていた。
俺はすぐに艦に戻って報告した。MAKIは言った。
「すぐに陸戦部隊を派遣し、救出に向かいます」
うん。早く助けてやってくれ。なんなら俺も行くから。陸戦技能80くらいにしてあるから。
続けて、MAKIは言った。
「政治的な理由により、救出は行われませんでした」
なぁ。MPKってさ。
6月8日に始めて、8月19日までの間で、唯一俺に「疲れてるのか? 休んだほうがいいぞ」って言ってくれた奴なのよ。それもつい数日前。
そりゃ、俺は疲れてること自体少ないから、普段はそう聞かれても「大丈夫だよ」しか選べないってだけなんだけど。でもちょっと嬉しかったんだ。俺あいつの事結構好きなんだ。
「物理的に救出が不可能だから」とかならまだしも、仲間を助けられない政治的な理由って何ですか。ねぇ。
MPK
2252年8月19日没
飛行隊に配属しなくても、派遣しなくても、死人が出る。
戦争も政治も俺もクソ喰らえ。
投稿者 jeha : 2005年07月19日 11:37
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