2007年02月14日
[世界樹]Rep1:陽光に煌めく大剣を掲げて
私の名はリーゼル。リーゼル・ランカスター。アルケミストだ。
私は今、王都(※1)を遠く離れ、エトリアという街にいる。
──エトリア。今やその名を知らぬ者はいない、迷宮の街。戦士や学者、そしてそれを志す者がこの地を訪れる理由はただ一つ。世界樹の迷宮に挑むため。
勿論、私自身もその一人だ。
* * *
エトリアに向かい、迷宮に挑むと告げた日。「女は美しく在れば、後は無能なほど良い」を持論とする母上は酷く嘆かれ、思い通りにならぬ娘を持ったその身を呪った。次いで私の気が変わらぬ事を悟ると、怒りを顕わに私を詰った。そういった母上の反応は当然私の予想通りであったが、父上が反対しなかったことには、些か驚かされた。
だが、考えてみればさほど意外なことではないのだ。ランカスター家には兄上がいる。兄上は私など足下にも及ばぬ優れたアルケミストだ。加えて、私が手柄をたてる可能性も無ではない。そう踏んだのだろう。
勉学に励んだ所で、女の身では名家に嫁ぐくらいが関の山。私の父はそういった手段で家名を上げる事を好まない人間だ。
「反対はしないが、条件がある」と、父上が用意した護衛の者が到着するより早く、私は忍んで家を出た。エトリアは今や大陸一の要所、街に向かう商隊や冒険者の一行を捜す事はそう難しくない。私は無学で世間知らずな箱入り娘ではないのだ。
唯一、教課課程を終了しないままアカデミー(※2)を離れたことは、残念に思う。しかし、後悔はしていない。
私はここで、教官の定めた課程を学ぶよりも、多くを得るだろう。
少なくとも、安全な学舎にあって空想上の手柄話を競い、夢敗れた冒険者達を愚弄する、あの者達よりは。
* * *
エトリアに着いた私は、門衛の忠告通りに冒険者ギルドへと向かった。未だ実戦を経験していない私だが、一人で迷宮に踏み入るほど愚かではない。私には共に戦う仲間が必要だ。
それ以前に、迷宮に入るためには、冒険者としてギルドへの登録が必要だという。迷宮、その入り口は執政院の管理下にあり、皆に開かれた場所ではなかった。
エトリアは小さな街ながら、未曾有の発見に活気づいていた。街を訪れる人間の多くがはじめに目指す場所である冒険者ギルド。そこに辿り着く事は、難しい事ではなかった。
冒険者としての登録を申し出た私に、ギルドの職員は、まず所属するギルドを見つけるようにと告げた。冒険者ギルドは複数の小規模なギルドからなり、個人はその下に登録することになるようだ。
人員を募集しているギルドはそう多くなく、未経験者を可とするものは片手で数えられる程しかなかった。私の名で新しいギルドを設立することも可能だが、私にその責が果たせるとは思えない。反対に、ギルドに所属したい旨を伝え、勧誘を待つことも出来たが、待ちの姿勢は私の性に合わぬ。
数少ない選択肢。その中の一つが、私の目を惹いた。
それは両手持ちの大剣の名を冠したギルドだった。
その大剣の形状と用途は見知っていたが、幼少よりアカデミーの寄宿舎に入り、武芸に縁遠い生活を送ってきた私にとって、特別親しみのある名称ではない。それがなぜ、私の目に止まったのか。
職員に尋ねると、今日登録されたばかりだというそのギルドの設立者は、パラディンの男性だと教えてくれた。
──ああ、そうか。
随分遠く思える昔。兄上に手を引かれ、見物に行ったパレード。
人混みを掻き分けて進んだその先では、馬上に在って重い鎧に身を包み、威風堂々とした聖騎士が、誇らしげに胸に大剣を掲げていた。
それ以上に誇らしげだったのが兄上で、そのパラディンが何という名で、どんな武功を立てたのか、およそパレードには相応しくない古びた鎧の由来、武具の名称など、幼い私には理解しきれない知識を矢継ぎ早に並べ立てた。
そして最後に陽光を受けて輝く大剣を見上げ、その煌めきを瞳に映して、言ったのだ。
いつかは自分も、聖騎士になる、と。
その大剣の名が、クレイモアと言った。(※3)
■本日のクレイモア一行





アルフォンス、キード、ロイ、エルヴェ、リーゼル
※以下、B1Fのネタバレがあります。てか前置き長ぇよwwww
* * *
その男は、私の記憶にあるパラディン以上に丈高く、いうなれば巨大だった。
幼少の私にとって、馬上の聖騎士は山の如き存在感を放っていたというのに、その、馬の背にある状態と同じか、あるいはそれ以上に大きく思えた。
身の丈は2メートル程だろうか。私は小さな子供に戻った気分で、暫し黙って赤毛の男を見上げた。
失態だ。
初対面の人間──私との面談のために自ら冒険者ギルドまで出向いてくれた男の顔を、真正面から痴れ者の如く無言で見つめるとは。無礼なことこの上ない。
しかし男は予想外に幼く破顔して、自分を呼び出したのは私かと問うた。
私が応じて己の素性と、男のギルドに所属したい旨を手短に伝えると、自らも礼儀正しく名を名乗り、エトリアには昨夜着いたばかりなのだと言った。
クレイモアには既に3名が所属しており──うち2名は昨夜のうちに、残り1名はつい先程、何れもアルフォンスが勧誘した──明朝顔合わせを兼ねて、入り口付近の探索を行う予定だと言う。
「君の都合が良ければ、今日の内に準備を整えて、明日の朝9時に“金鹿の酒場”まで来てくれ」
男──アルフォンス・キャヴェンディーシュはそう続けて、口を噤んだ。
それだけ、だろうか。
面接とは言わぬまでも、もう少しこう……、志望動機を確かめるなり、加入条件や留意事項を告げるなりするものではないのだろうか。
しかし、男の言いたいことはそれだけだったらしい。去り倦ねている私を見て、私が抱いたものと違う理由を思いついたようだ。人の好さそうな笑顔が、困惑に歪んだ。
「あー、……支度金は? それと……宿を手配しようか?」
「いや、問題ない」
私は即答した。全く、小娘扱いしないで欲しいものだ。
とはいえ、問題は正にそこにあった。望むと望まざるとに関わらず、私は実戦経験のない、15の小娘なのだ。それだけは伝えておかねばならん。
「キャヴェンディーシュ殿」
改まって姿勢を正した私に、男は苦く笑った。
「“殿”は余計だ。それに、アルで構わない。長ったらしくて面倒な名前だ」
「では、アル。恐らくお気づきかと思うが、私は、その……戦ったことがないのだ。実戦経験がない」
それで? と言うように、口元に笑みを残したまま、大男は首を傾げた。
「それでも構わないだろうか?」
「ああ。問題ない」
「……了解した。それでは、明朝9時に」
男は即答し、私は男の元を去った。
「問題ない」と、キャヴェンディーシュ殿──アルは言ったが、私は正直疑問だった。構成員の監査を行わず、経験の有無も気にしない。このギルド、そしてギルド長は些か、楽観的に過ぎないだろうか。
──あるいは、明日の顔合わせが試験を兼ねているのかもしれない。
うむ。そう考える方が現実的だ。
アルフォンスは稀に見る大男だが、育ちの卑しからぬ品性を備え、大柄な人間にありがちな知性の欠如は感じられなかった。恐らく、それなりの考えがあるのだろう。
私はそう結論づけて、この問題を明日まで保留とした。
* * *
そして翌日、アルフォンスの元に集った顔ぶれに、私は別の理由を思い至った。
ソードマンのキード、レンジャーのロイ、バードのエルヴェ、そしてパラディンのアルフォンス。いずれも成人した男性で、傭兵の一団のように手練れて見える。
私一人が足を引っ張った所で、どうということもない。探索に最適とされる5人ではなく、4人で迷宮に赴こうとしていたことも納得できた。
私たちは、極めて手短な自己紹介──名前と、職業を述べるだけのもの──を行い、迷宮に赴いた。余談になるが、皆アルと同様に、私が敬称をつける事を拒んだ。
アルの話では、執政院は新規に設立したギルドに、まず地下1階の地図を作製し、提出することを義務づけていると言う。すなわち、簡単な腕試しだ。
今日の探索は、私たちの顔合わせと同時に、地図の作製が目的となる。そして恐らく、共に戦う仲間となり得るかどうかの査定だ。
* * *
私の得た印象通りに、彼等は手慣れていた。凶暴で見慣れないものとは言え、所詮は小動物、襲い来る獣など恐るるに足らないようだ。(※4)
そんな彼等の中にあって、私自身も手間取ることなく落ち着いて術式を発動することが出来た。
遙々故郷を離れ、未開の迷宮に潜っているというのに、土竜や鼠に氷塊をぶつけることになろうとは思わなかったが。
戦闘以外では、本日の目的である地図の作製を任された。
アルとキードは緊急時の対応に備え常に身軽でいることが要求され、ロイは索敵に神経を割くために端から除外。残ったエルヴェが「オレ、そういう面倒なの苦手」と言った末に任された仕事ではあったが、作図は私の得意とする所であり、光栄な事だった。
不満があるとすればただ一つ。同行者の身長が一様に高かったことだ。
迷宮ではアルフォンスとキードが先頭を進み、その後ろに私とエルヴェがつけ、私のやや後方でロイが殿を勤めた。彼等──特にロイはさり気なくその隊形を保っていたが、それでも私を守る意図があることは察せられた。
勿論、それは仕方のないことだ。私は経験でも、肉体でも、職業的な装備の面から見ても、彼等に劣っている。不服はない。
しかし長身の4人に囲まれて、私の視界は覿面に遮られた。特に私の数歩前を行くアルフォンスの身体は、さながら壁か、あるいは動く山と形容して然るべきものだ。
私は可能な限り注意深く、主にアルフォンスの四肢、金属鎧の隙間から行き先を探り、紙面に落としたが、それはお世辞にも快適とは言い難い作業だった。
もし私の作成した地図の精度に問題があるとしたら、そういった環境の面も考慮して貰わねば、割に合わない仕事だ。
このように多少の困難はあったものの、私達は概ね順調に歩を進め、正午には樹海の奥に、開けた場所を発見した。明るく陽が注ぎ、美しい花々が甘い香りを放つ、平和な光景。時間と地形的なキリの良さから、私達はそこで一端休憩し、軽く昼食を摂ることになった。執政院の兵士に指定された範囲の地図はほぼ作成し終えて、残りを埋めるには1時間もあれば充分だろう。
食事を終えた私は、一人輪を離れて茂みに近寄ったロイを見真似て、いくつかの木の実と苔を採取した。
他人を全く意識していないようでいて、ロイはそれを見ていたらしく、「飲み込みが早いな」と笑った。アルフォンスの朗らかなそれとは違う、皮肉めいた笑い方であったが、褒められたのだと思う。
彼は私の手のひらに自分が採ったものを加えて、これらは薬の材料として使え、街に持ち帰れば、宿代程度にはなるだろうと教えてくれた。私は内心得意げな気分で、ロイと共に3人の元に戻った。
日差しは暖かく、私は満ち足りていた。
己の手で生き物の命を奪う後味の悪さにも慣れはじめ、戦い慣れた4人に囲まれて、いつの間にか、ちょっとした遠足にでも来ている気分になっていた。油断していたのだ。
私以外の4人もまた、同様であったのかもしれない。
「──おい」
最初に声を上げたのはロイだった。
食事と休憩、今後の予定を決め終え、その場を去ろうとしていた時のことだ。彼は静かに弓に手をかけて、視線を上向けた。
次いでキードが呆れたような溜息をついて剣を抜き、アルフォンスは眉を潜めて盾を構え、エルヴェは「参ったね」と小さく笑って傍らの私を見下ろした。
辺りにはいつの間にか、蝶が舞っていた。
たかが蝶とは言え、この地では油断ならない存在だ。
ここに辿り着くまでに私達を襲ってきたものとは違うようだが、かといって安全とは限らない。むしろそれらは、意志を持って私達を取り囲んでいるように見えた。
私も直ぐさま杖を構え、手近な一匹を標的と定めた。
ロイが弓を引き、エルヴェが勇壮な音色を奏でる。にわかに慌ただしく羽ばたきはじめた紫の蝶に向かって、キードが斬りつけた。
「──の野郎、硬ェな」
実際に硬質なわけではない。ロイの矢に加えてキードの渾身の一撃を受け、その羽に傷を受けてもなお、蝶の羽ばたきは衰える様子を見せなかった。キードの呟きは誰に向けたとも知れない素っ気ないものであったが、今までの戦闘にはなかった緊張が感じられた。
とはいえ、私に出来る事は一つしかない。私は己の標的に向け、術式を放った。瞬間、毒々しい紫の羽を薄く氷が覆う。だが、まだ足りない。羽ばたきでそれを振り落とした厄介な敵を前に、私は次の攻撃を与えるべく、再び杖を向けた。と、その身がフワリと宙に舞い、次いで私目掛けて飛来した。
──不味い。
私は咄嗟に杖で己を庇い、硬く目を瞑った。──が、予期していた衝撃はなく、目を開いた時には既に、蝶は間合いを取り、身構えた私を嘲笑うようにユラリと舞っていた。一呼吸遅れて私の前に立ちはだかったアルフォンスが、怒声と共に剣を振るって注意を引き、チラと私を伺う。
平気だ。そう答えようと息を吸った瞬間、喉の奥に焦げるような痛みを感じた。鱗粉を吸い込んでしまったのだろうか。
声が出なくともそう問題はないが──
その時、大気が牙を剥いた。目に見えない何かに叩き潰されるような激しい衝撃に襲われ、私は膝をついた。視野が狭窄し、肌が燃えるように痛む。息が出来ない。
「──クソッ、毒だ!」
誰かがひび割れた警告の声を上げ、私の意識は暗闇に呑まれた。
* * *
目が覚めた時、真っ先に私の目に映ったのは、見覚えのある白い天井だった。
ここは……アカデミーの寄宿舎だ。と、いうことは、私は戻ってきたのか。あれは──あの満ち足りた気分、久しく味わった事のない充足は、夢の世界の出来事だったのだろうか。
焦点の定まらない漠とした喪失感に、私は顔を覆った。
「何処か痛むか?」
直ぐ近くで聞こえた男の声もまた、聞き覚えのあるものだった。ああ、やはりあれは夢だったのだ。この声は、恐らく……、恐らく──?
アカデミーの生活の中に声の主を捜し出せず、私は跳ね起きた。
「大丈夫そうだな」
目に入った光景は予想していた寄宿舎のそれではなく、私の目の前には男が──ロイがいた。その向こう、隣のベッドに寝ているのは、見知らぬ男だ。やはり見知らぬ白衣の男が、血に濡れた腹部に治療を施している。皆は何処へ行ったのだろう。私は何故、ここに居るのだろう。
「──ここは?」
「治療院だ。覚えてないか?」
手に持ったベルトポーチの中身を軽く改めながら、素っ気なくロイは言った。椅子から立ち上がり、それを身につけるロイの姿を眺めながら、私は必死に記憶を辿った。その問いに答えなければ、これはやはり夢で終わってしまうのではないかと、そんな気がしていた。
「私は──森で、紫の……」
目を閉じると、まだ熱を持った粘膜にじわりと涙が滲む。泣いているわけではない。泣いている場合ではない。王都を出、エトリアに辿り着いてからの記憶を順に、急いで浚い、最後に耳にした声もまたこの男のものであったと、私は思い出した。
「毒、か?」
ベッドの傍らで私を見下ろし、ロイは黙って頷いた。
「……すまない」
「気にするな」
項垂れた私にロイは言い、私は嘆息した。そう。私は今朝まで、生身の戦いとは縁遠い、温室育ちの小娘だった。恐らく彼等にとって、この程度のことは想定内であったろう。身の程を弁えねばならぬ。問題は──それでもなお、彼等が同行を許してくれるか、だ。
失望の色を予期して顔を上げた私に、ロイは小首を傾げ、例の皮肉めいた笑みを浮かべた。
「俺もやられた」(※5)
それで、再び、私は最後に聞いたあの声の、苦しく絞り出すような調子を思い出した。
「立てるか?」
私が身勝手な安堵に浸る間もなく、ロイは窓際に置かれた私の眼鏡を手に取って差し出し、私はそれを受け取って身につけ、ベッドを下りた。
着衣を整え、足下に置かれていた荷物を持ち、杖を手に取る。その重みに、これは夢ではなく現実なのだとようやく私は思い知った。それは幸いな事であると同時に、恐ろしい側面も持っている。私は命を落としかけたのだ。
明瞭な視界と落ち着いた思考の元で振り返った室内は、アカデミーの安全で味気ない寄宿舎とは似ても似つかず、私が寝ていたベッドには、早くも次の冒険者が担ぎ込まれていた。
* * *
治療院を出るとまだ日は高く、そこにはアルフォンスが居た。大柄な彼は自ら待合室を出て、外で私達を待っていたらしい。「律儀な奴だな」と半ば呆れたようにロイは言って、アルは子供じみた仕草で赤毛をかいた。
あの後──私が倒れた後、例の蝶は何とか片づけたものの、ロイも毒に犯され、意識さえ失わなかったが戦闘不能となり、私と共に治療院で休んでいたそうだ。深手を負ったキードは休息を取るため宿へ、件の戦闘に限らず終始無傷だったエルヴェは手に入れた素材を捌くため、商店に向かったという。
「吟遊詩人って奴は要領が良いんだ」と、ロイは笑った。
これから夜まで休み、皆の体調が良いようなら、執政院の依頼──地図の作成を今日中に片づけてしまいたいと、アルは言った。挽回の機会を与えられたのだと考え、私は一も二もなく頷いた。
軽く睡眠と夕飯を摂り、ついでに午前中の報酬を分配して、私達は再び樹海を訪れた。
日の光の元で歩いた森には牧歌的な雰囲気すら感じられたが、夜は流石にその趣を変える。昼間の出来事のせいもあって、私は気持ちも新たに迷宮に挑んだ。
しかし、不気味な静けさと、その静寂を切り裂く鳥の悲鳴を別にすれば、私達の前に現れる獣に変わりはなく、あの蝶も姿を現さなかった。
行く先の暗さに手こずりはしたものの──執政院が夜の迷宮を開放している事自体、些か意外だった──昼に見積もった通り、小一時間で予定の一帯を踏破して、私達は先に進む許可を得た。
執政院の兵士が遮っていた先には地下へと続く荒い階段があり、それを下りた先には上階と変わらぬ樹海が広がっていた。──と、ロイが短く制止の声を上げ、指し示した夜の闇の向こうに、朧気な蝶の影が踊った。その羽はカンテラの光を受けて、紫に煌めく鱗粉を撒き散らした。
杖を握る手のひらが汗ばむ。エルヴェがカンテラに手を翳し、キードが傍らのアルを伺う。アルは静かに首を振って、否定の意を表した。
私達の見守る中、蝶はこちらに気づいていない様子で、ヒラヒラと頼りなく舞いながら、森の奥に消えた。
「──今日はここまでにしよう。執政院には明日の朝、報告しておく」
そして私達は来た道を引き返し、迷宮を後にした。(※6)
街に着くと、再び明朝9時の約束を取り交わし、皆と別れた。と、言っても真夜中の街に消えたのはエルヴェだけで、私を含む4人は真っ直ぐ宿に向かった。
先に受付を済ませたキードとロイが階段を登って行き、その後を追おうとした大きな背中を、私は呼び止めた。振り向いたアルは変わらぬ朗らかさで、その笑顔は子供じみていると言うよりも、むしろ大人が幼い子供に向ける類のものに思えた。
「一つ、ハッキリさせておきたい事があるのだが」
人の好い笑顔に私は言葉を探して言い淀み、結局適当なものを見つけられず、妥協した。
「私は、合格だろうか?」
「うん?」
「私達を試していたのでは? つまり、貴方のギルドの一員となり得るか」
「いいや。特にそういうつもりは……。これでも人を見る目はあるつもりなんだが」
顎に手を当て、首を傾げたその表情に惚けている様子はなかった。と、いうことは、私の杞憂であったのか。だが、しかし──
「しかし、私は……正直、皆とは実力の面で釣り合わないように思う。足手まといではないかと──」
その時、見上げた男の肩の向こう、吹き抜けになった2階の廊下の手すりに、肘をついて誰か──ロイがこちらを見下ろしていることに、私は気づいた。私と目が合うと、ロイは唇の端をつり上げる例のやり方で笑い、身を翻した。
見られていた。聞かれていただろうか。私の視線を追ったアルフォンスが背後を振り返った時には既にその姿はなく、私は些か狼狽えながら、言葉を続けた。
「つまり、要するに、その……私は明日、また…同行しても良いのだろうか?」
「ああ、勿論」
男は即答し、そして私の前に歩み寄って、腰を折った。
「君は充分、良くやってくれたし、君が居てくれると、私達はとても助かる」
そう言って、男は手を差し出した。私はその意図する所を理解できず、アルと初めて会った時のように、馬鹿者らしく目の前にしゃがみ込んだ大男を見つめた。そして、気がついた。
ああ、成る程。どうやら私は褒められている──いや、認められているようだ。アカデミーでは私がどんなに良い成績を収めようとも、大人達は「良くやった」と私の頭か肩を軽く叩くくらいで、私に握手を求める人間など居なかった。彼等は私を、年端もいかない幼い子供であるかのように扱った。まだ己と肩を並べるには及ばない、取るに足らない存在にするように。
私は──全く情けないことに──脅え、躊躇しながらも、悪びれた様子のない笑顔に、おずおずと手を差し出し、男はそれを緩く握った。
「明日からも、よろしく頼む」
「……う、うむ。了解した」
今まで私の回りに居た男──錬金術師達の手とはまるで違う、大きくて無骨な、硬い手のひら。その温もりに包まれた私の手は、まるで赤子のように頼りなく見えたが、
何故だか今は、それを許しても良い気がした。
※1:王様いるのか知らねーが、それっぽい誤魔化しの効く単語が思いつかなかった。
※2:やはりでっち上げ。上流階級向けアルケミ学校(小〜大一貫)みたいな所を想定。鼻持ちならない貴族野郎がゴマンと居るのだっ。
※3:格好つけてみたがギルド名は適当に決めた。この設定は後付である。
※4:設定のため、野郎共は最初にLv上げといたという念の入れよう。
※5:1ターン目でリーゼルが毒で即死。次のターンでロイが毒→殴り→毒発動で死亡。アルフォンスには効かなかった。キードは食らったが耐えた。毒いてー。エルヴェは無傷です! ロクに役に立たねぇ上に弾よけにもならねーぜ!
※6:ホントはB2Fに下りて直ぐに「執政院に報告しよう」とかメッセージ出たお。しかし地下でも木が生えてて日が差してて地面があるとか理解に苦しむお。
■BF1踏破時の成績
アルフォンス(Lv7)、キード(Lv7)、ロイ(Lv7)、エルヴェ(Lv7)、リーゼル(Lv6)
死亡者:2名(ロイ、リーゼル)
全滅回数:0回
ミッション1:終了
諸般の事情によりSS式プレイ日記。プレイ時間より日記書いてる時間の方が長い。この程度で丸二日とかかかっちゃうんだぜ! 遅いぜ!
てかおよそ10年ぶりにこういうの書いたぜ。
読む分にはシブいオヤジ主人公が良いが、自分で書く分にはガキが便利だ。特にこういう根はいい子なんだけどちょっとヒネてる子が楽しい。
続きは普通のプレイ記録になるか、あるいは続かないかも。
投稿者 jeha : 2007年02月14日 19:24
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コメント
世界樹俺もやってるよ(´ー`)期待しすぎたからちょっと肩透かしくらったけどもう少しがんばろう
投稿者 Bigjoe : 2007年02月15日 10:44
俺は微塵も期待しちゃいなかったけど7階で止まったままだ。
投稿者 jeha : 2007年02月22日 12:28